瓦屋根は地震に弱い!?データから見る瓦屋根の耐震性

瓦屋根の耐震性 瓦のすゝめ

「瓦屋根は地震に弱い」

そんなネガティブなイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。

事実、瓦屋根は徐々に減り続け、阪神淡路大震災以降で決定的になりました。

しかし、 瓦屋根は決して地震に弱いという訳じゃないんです!

今回はそんな瓦屋根の耐震性についてデータを元に考察していきましょう!(^ ^)

耐震実験

震度7でも異常なし

 阪神淡路大震災を契機に、瓦屋根の屋根施工基準ガイドライン工法が設けられました。

全日本瓦工事連盟がガイドライン工法で葺かれた瓦屋根の耐震機能を測る実験を行いました。 震度7クラスの振動を8回起こしたところ、瓦の落下、ズレ、浮き上がりなどは一切確認されませんでした。このように、瓦が特筆して地震に弱い屋根材ではないということが証明されています。

瓦屋根の耐震実験

瓦屋根の耐震実験

全日本瓦工事連盟Webサイトより引用

耐震性を決めるのは躯体

屋根は軽くても倒壊する

上図は、2016年に熊本で起こった震災の様子です。

屋根が軽いからといって耐震性が担保されるわけではないということがわかります。

耐震シミュレーション

耐震実験に続き、同様の震度を想定した耐震シミュレーションも行われ、 建物がどのように揺れ、どのように壊れるかを検証しました。

このシミュレーションでは、耐震補強がなされていない瓦屋根の耐震評価点を0.51とした場合、同一条件での軽量の屋根と耐震補強がなされた瓦屋根を比較したものになっています。

耐震シミュレーション

全日本瓦工事連盟Webサイトより引用

スレート屋根と金属屋根の耐震評価点が上がっているのは、瓦屋根の時に比べて、屋根が軽量化されているためです。これは、屋根は軽い方が耐震性においては少し優位だということを意味します。

しかし、結果的に耐震補強がなされていない家は全て倒壊し、耐震補強の瓦屋根は無事という結果が出ました。つまり、 耐震補強がなされていないまま、屋根を軽くしても意味がないということを示しています。

結果から、耐震評価を上げるためには以下のことが重要だとわかりました。

住宅の耐震補強は、第一に壁の筋交いや補強用面材による壁の補強、第二に基礎のひび割れの補修や無筋基礎の有筋化、第三に土台や柱下が腐朽している場合における改善・劣化対策が重要であり、最後のその他の項目として壁や屋根の軽量化が有効と言われています。

全日本瓦工事連盟Webサイトより引用

以上のことからも、 耐震力において屋根の重量はそこまで問題ではないことがわかります。

繰り返しになりますが、 耐震性で最も重要なのはあくまでも建物の基礎ということです。

躯体の重要性

上記で耐震力は躯体が命だという話をしましたが、実際に 阪神淡路大震災で倒壊した家屋は、躯体に主な欠陥があったことが後の調査で明らかになっています。

特に古い木造住宅が軒並み被害にあっていますが、建てられた当初の耐震基準が今ほど厳格でなく、さらに瓦屋根も旧来の工法である土葺き工法で屋根の荷重が重かったため、木造の瓦屋根が多く倒壊したという結果になっています。しかし、木造建築であっても、耐震構造に則り最近建てられたものは被害が軽度でした。

余談ですが、震災で無事だった建物は壁に筋交いが入ったものや、枠組壁工法で施行されたものが多かったそうです。これは耐震シミュレーションの結果と合致するもので、壁の強度がいかに耐震にとって重要かを示します。

筋交い

筋交い

Wikipediaより引用

震災時は旧来の工法

”土葺き”から”桟葺き”へ

 震災後、メディアなどで落ちた瓦や崩れた棟が頻繁に映されますが、実はその ほとんどが旧来の工法で葺かれた瓦屋根です。

瓦屋根は高度経済成長期(1954~1970年)に全盛期を迎え、屋根材と言えば瓦といった勢いで、どの家も瓦屋根が用いられていました。

上記にもある通り、この頃は耐震基準も甘く、旧来の工法で葺かれていたため、その後の大震災に対応できず、「瓦屋根は地震に弱い」という印象を持たれてしまった訳です。

旧来の工法は「土葺き工法」と言い、瓦の下に土を敷き詰めて葺いていく工法でしたが、現在は「桟葺き工法」と言い、木に瓦を釘で打ち付けて葺いていく工法が一般的となりました。

また、桟葺き工法は土を使わないため、旧来の工法より半分近く軽量化され、釘で打ち付けられているので、瓦の落下リスクが非常に少なくなったのも特徴です。

瓦屋根の寿命は非常に長いため、現在でも多くの家が旧来の工法で葺かれています。そのような家が地震や台風の被害に遭うたびに、「瓦屋根は地震や台風に弱い」といった誤解を生んでいます。

現在では、耐震基準も見直され、新たな施工法も生まれたため、地震にも台風にも強い施工がなされています

まとめ

まとめ

・瓦屋根は最新の工法により大型地震にも耐えれる

・耐震補強がなされないまま屋根を軽くしても無意味

・耐震力において、屋根の重さは重要ではない

・耐震性で重要なのは、建物の躯体

終わりに

いかがでしたでしょうか?(^ ^)この記事を読んで、「瓦屋根は地震に弱い」という誤解が解ければ幸いです!

屋根を軽くすれば耐震性が上がるのは事実ですが、最も重要なことは、建物の躯体であるということを忘れてはいけません!

瓦は”ただ重いから”と言って敬遠されるには余りにも惜しい「他の屋根材にはない機能」をたくさん備えています。

それは次の記事で詳しくお伝えしたいと思います!

長くなりましたが、ありがとうございました!^_^

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